SPLのプラグインコンプレッサーIRONをレビューしていきます。
SPL公式よりも早くエミュレーションのプラグインが他者から出されているこのコンプですが、実機が70万円くらいとみんな使ってみたいコンプなのでしょう。
実際使ってみると、結構難しい。
真空管コンプ
アナログのコンプレッサーには大きく4つの動作タイプがありますが、このIRONはその中の真空管タイプにあたります。
真空管タイプの特徴としては搭載されている真空管によるサチュレーション効果。
実際のコンプの潰れ具合など出音が様々で、意外と機種によって違うので一概に真空管コンプはこういう感じ!みたいに言えないです。
今回のIRONは6種類の整流回路というのが搭載されているそうで、要は6種類のモードが入っているみたいな感じでしょうか。
それぞれでアタックとリリースのかかりが違ったりします。
同じような内容のコンプは他にないので、なかなか比較が難しいところです。
良いところ
セッティングの幅が広い(できることが多い)
前述のコンプのモードでも6種類、さらにサイドチェインフィルターが6種類入っています。
このサイドチェインフィルターは純粋にハイパスをするもの以外に、特定帯域をピンポイントで削るものなど他のコンプではなかなかできないような内容となっています。
他にもコンプ以外で低域と高域を持ち上げるAirBassスイッチ、PA共通のTMTやユーティリティー機能などかなり盛りだくさんです。
音が良い
TMT機能が付いたあたりからのPAのプラグインは全体的に音が良いと語られることが多々あります。
このIRONもそのTMT機能が付いているというのもあって、音が良いように感じます。
アタックが平面的な感じではなく、波形の形が感じられるようなしっかりとしたダイナミクスが感じられます。
何より真空管による歪みがわざとらしくないがとても好みです。
サウンド個々の印象を変えずにそのまま音が厚くなるような印象を受けます。
アタックやリリースの調整できる幅があって真空管コンプにしてはコンプ感を感じなくもないですが、それでも他のコンプ感が強い機種と比べるとそこまでではないです。
他の代表的な真空管コンプと比べて、このコンプ特有のキャラクターみたいなのはそこまで強くは感じません。
ある意味原音に対してクリーンなのがキャラクターという感じでしょうか。
微妙なところ
分かりにくい
すべてにおいて分かりにくいな〜という感じです。
それは画面のUIやらコンプとしての使い方やらサウンドのキャラクターやら。
クリーン目なサウンドのキャラクターというのもただ良い言い方をしているだけで、裏を返せば分かりやすく良い感じにはならないということです。
マスタリングコンプということですが、思ったよりもガッツリ歪むのが早いのでかなりセッティングは追い込む必要があると思います。
正直他のコンプの方が設定しやすくて仕事が早い、かつ効果が分かりやすいので数ある中からこのコンプを最初に持ってくるのは現状難しいなと私のストックの中では思ってしまいました。
UI自体は慣れればそこまで超難しいと言うほどでもありません。たぶん。
SPL製品が大体こういう感じです。集合体恐怖症の人に優しくないです。
まとめ
うちの環境だと音は良いし結構作り込めるけど、同じくらい良くて早く終わるものがあるので先にそっちを使っちゃうな〜みたいな感じです。
先にAcusticaでCoralという同モデルのコンプが出ているのですが、個人的にはそちらの方がキャラクターが分かりやすいので操作は同じでもそちらの方を先に試したくなっちゃうかもしれません。
気が向けば使うかな〜という感じ。
というか実機はVari Muと比べられる的なことをマニュアルでも書いてあるっぽいので、本当にそのコンプをメインで追い込んで使うなら頑張って70万何とかして実機を使いたいな〜とか思っちゃいます。
物は良いだけに惜しい......(自分の希望・好みに沿わなかっただけですごめんなさい......)