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【Tips】ミックス時に注意すべき点をマスタリングエンジニア視点からアドバイス

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Daft Punkなどを担当したことで知られるマスタリングエンジニアConor Daltonがマスタリングエンジニア視点からミックスで注意した方がいい点を紹介しています。

目次

作業中に低域がハッキリと聴こえない

Q
ミキシングエンジニアが小型のスピーカーを使用しているため低音が出過ぎ、スピーカーから最低オクターブが出せないため作業中に低域がはっきり聞こえないということがあります。(ニアフィールドモニタースピーカーなどがこれに該当するかと思われます。)
A

位相相関メーターやスペクトラムアナライザーでの作業に慣れて、ボリュームを合わせたリファレンス曲を定期的に聴いて耳をリセットしながら作業するとよいでしょう。

おすすめのスペクトラムアナライザーと位相メーター↓(フリー)

様々な再生環境に対応できるミックスに必要な要素とは?

Clarity(音の明瞭感、分離感)

ミックスの個々のトラックを識別する能力。これは楽器がパン、周波数、位相の面で独自の空間を占めることによって達成されます。(つまり音が被らないようにする)

技術的な問題を解決する

不要なノイズの除去、レゾナンスのコントロール、ボーカルのポップやクリックの修正、ボイスのシビランスのコントロールなどをして、トラックの致命的なミスを無くしましょう。

時間軸で音を揃える

ミックスの構成要素を可能な限り時間軸で揃えましょう。例えば、ドラムのように数ミリ秒単位で時間軸を前後させ、類似した要素のピークやトロスを揃える。Little Labs IBPやVoxengo Pha-979など、位相回転プラグインを使ってさらにタイトにすることもできます。

Punchを出す

ドラムにトランジェントのエネルギーが感じられますか?それとも、暖かみのあるサウンドを優先するあまりキレを犠牲にしていませんか?ドラムのアタックはダイナミックなエネルギーがスピーカーから飛び出すようにするために重要で、トランジェントがグルーヴを動かします。Oxford Transmodのようなツールを使えば、コンプレッションされすぎた素材にトランジェントを取り戻すことができます。

Depth(音の深さ、奥行き)

ノイズ(明瞭ではない音の比喩、例えばリバーブとか後方に置きたい音とか)がどの程度近いか、サウンドステージの前方か後方か(他の全てと比較した場合の音の大きさで決定される)。リバーブ/ラウドネス/ティミング/ワイドを使い、全体のイメージを大きくできるようにしましょう。動き(リアルタイムのパンや音の前後の動きなど)はリアルさと「ステージ」を生み出しますが、最も重要な素材(ボーカル、リードシンセ、キック、ベース)がセンターステージに感じられることで、自信に満ちたサウンドになることを忘れないでください。

音の個性

ノイズの音色や個性を感じることができるか。ノイズ特有のテクスチャー、トーン、フィーリング。クリーンか、ダーティか?生々しい、滑らか?飽和しているか、乾いているか、薄いか、暖かいか?ある要素が別のオクターブを埋めるためにダブル化されたりデチューンされたりしていないか? 

トラック間のバランス

各要素が競合しすぎず、他の要素より突出することなく、すべてが聞こえるような音量になっているか?何かが他の楽器の後ろにいて、少し聞き取れなくなるくらいに無視されていませんか?周波数帯域はどうでしょうか。周波数帯域が曲の成分で満たされているか、特定の帯域がおろそかになっていないか。 

人が聴いてどう感じるか

間違いなく最も重要であり、上記のすべてのカテゴリーの組み合わせとなります。人間的な観点では、人としてどう感じるか?アーティストのストーリーに共感できるか?かつてマンディ・パーネルが言ったように、もしあなたがビーチバーで「Bob Marley – Jammin」を聴いたとしたら最初に思うことは「この曲は高域が少ないな」ではなく、「この曲は私を良い気分にさせてくれる」ということでしょう。曲はどのようにあなたに何かを感じさせるのでしょうか?それはまた別の話です。 

パワフルなミックスを実現するには?

大前提としてパワフルなミックスはすべての段階で決定されたすべての組み合わせが慎重に微調整されたものです。 サンプル、マイク録音、アナログ機器、VSTインストゥルメントなど、良質な素材を用意することが不可欠です。サウンドの選択によって、どこまでできるかが決まります。
次にプロダクションとアレンジメントですが、一度にたくさんのものを演奏しすぎてはいませんか?同じような楽器が多すぎて、スペースを奪い合っていませんか?曲の各セクションにマクロダイナミクスのコントラストはあるでしょうか? 

ハイパスフィルターを効果的に使う

ボーカル、ギター、ハットなど、必要ない超低域を除去するハイパスフィルタリングなどのテクニック(最小位相EQによる位相シフトや、線形位相EQによるトランジェントでのプリリンギングにより、悪影響も考えられるため、必要な場合にのみ使用します)。

ステレオを意識する

ステレオの最適化(パンニング、ワイドニング、ミッド/サイドEQ)、あまりワイドなサブ周波数情報を持たせない、メインの楽器がステージのサイドに聞こえるようにするのが良いでしょう。

ドミナントレゾナンスを修正する

ドミナントレゾナンス(狭い帯域で大きな音量を出す、単一の周波数帯)を修正する。1つの問題周波数を中心に外科的な精度でダイナミックEQをかけるか、狭い範囲に複数のレゾナンスがある場合は、マルチバンドコンプレッションで対応する。支配的な周波数は、周囲の周波数から注目/空間を奪うので、コントロールする必要があります。しかし、支配的な周波数を弱くするのではなく、支配的な周波数を一歩引いて、自信に満ちた、しかしコントロールされた音にすることが望まれます。

適切なEQタイプを使用する

周波数スペクトラムのバランスを取るために適切なEQタイプを使用します。リニアフェイズEQは、高域を追加しながら位相関係を保護したい場合、特に高域を緩やかにワイドQブーストするのに適しています。また、ミニマムフェイズEQは、トランジェントに対する外科的カットや中低域の補正に適しています。リニアフェイズEQを使用する場合はトランジェントのプリリンギングに注意し、ミニマムフェイズEQを使用する場合はフェイズシフトに注意しましょう。

1.5kHz〜6kHzは特に注意を

1.5kHz から 6kHz の間に特に注意してください。あなたの耳はここが特に敏感です。(参照:フレッチャー・マンソン・カーブ)もしこの部分の共鳴が抑えられ全体的に滑らかで音量が大きければ、曲は大きく、クリアでパワフルなサウンドになります。

ミックスのトリック

例えば、狭いヴァースと広いコーラス、あるいは静かなブレイクダウンで最初のキックドラムをインパクトのあるものに戻すなど、コントラストをつけることはミックスのトリックとして有効です。 

オートメーションを使ってコンプレッションし過ぎないようにする

オートメーションはとても重要で、私たちは(たとえ微妙な変化でも)大好きです。オートメーションをうまく選択することで、コンプレッションを下げることができます。 

問題箇所を修正した後、全体で聴いてみて判断する

耳で聞いてEQで探すか、SPANなどのアナライザーを使って視覚的に問題箇所を確認しましょう。大きなブーミーな共鳴音はないか?キーやルームレゾナンスは?EQ(ナローQ)でその1つを減らすと、曲はどのように感じられますか?全体的に軽く感じられますか?高音域がより開放的に感じられますか? 

ローミッドで曲の厚みをコントロール

150Hz~500Hzのローミッドの響きをコントロールすることで楽曲を自由で開放的な表現にすることができますが、ローミッドが不足しすぎると楽曲に自信や誠実さが感じられなくなるのでこの厚みが必要です。

ボーカルの歯擦音やノイズをコントロールする

ボーカルの処理では、歯擦音のコントロールが重要です。”SSSS “のようなきつい音はストレスになるので、ディエッサーやSoothe2などのプラグインを使用すると効果的でしょう。また、マイクに負荷がかかって空気が破裂したような音「プラシーブ」もコントロールします。Izotope RXから、これに対応するツールが発売されています。ボーカルのボリュームオートメーションも欠かせません。 

必要に応じたコンプレッション

必要に応じて広帯域ダイナミック処理(コンプレッション、エクスパンション、またはその組み合わせ)を行い個々の要素のダイナミクスを制御し、バス(ドラムバス、シンセバス)のダイナミクスも制御します。サイドチェーンを使って低域のコンプレッションのスレッショルドを緩和することは、ミックスバス処理またはドラムバス処理に有効で、圧縮が常に低周波のみによってトリガーされることがなくなります。

マルチバンド処理で問題を解決する

例えば2コーラス目の中高音域のバイオリンの音量が大きいなど特定の領域に周波数が集中している場合、マルチバンド処理によってその領域を抑え他の領域を残すことができます。(他の処理と同様、有益な場合にのみ使用します)マルチバンド処理はミックス全体を形作るのではなく、問題を解決するために使用するのが理想的です。

空間系は基本センドトラックで

ディレイやリバーブなどの時間ベースのエフェクトは、空間の感覚を提供するために個々のチャンネルではなくセンドに使用するのが理想的です。こうすることでドライ信号を保護し、100%ウェットな専用チャンネル(好みに応じてブレンド)で補完し、「部屋」の奥行きと空間の感覚を提供することができます。

サチュレーションで強調

音楽的な周波数領域や倍音をサチュレーションで強調すること。周波数帯域に新たな豊かさを加えます。 

最後に

本文はコチラ↓

Audio engineering advice

今回紹介した内容以外にも非常に有益なTipsや、おすすめのプラグイン(フリー含む)などが紹介されています。

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